2015/12/11

VMware, GitHub, vca-cli

この投稿は vExpert Advent Calender の一環です。


● GitHub

正規に出荷されている製品以外にも、VMware はさまざまなソフトウェアを作って世に提供していたりします。その一つとして有名なのが flings で、AutoDeploy のGUI Nested ESXi 向けの VMware Tools などが公開されております。

一方、最近になって活発になってきたのが、今回紹介する GitHub での活動です。
VMware 社の GitHub アカウントにはすでに100近いプロジェクトが登録されており、日々活発にアップデートされております。新規のプロジェクトもあれば、open-vmtools のように、以前 SourceForge にて公開されていたものが引っ越してきたとか、何故か Docker のブランチを作っていたりとか、様々なものがあります。

SourceForgeの open-vm-tools のページには、
ただ「引っ越した」の記載だけが残っています

今話題?の Photon についても、GitHub に登録されているのでどういったものかとか、今どこら辺の開発が進んでるのかなどが確認できます。何でしたら、github から clone (checkou)して自分でも弄ってみて、改善点を pull request で上げてみる、なんてこともできてしまいます。


GitHub Photon のページより



今回はこの中から、vCloud Air のコマンドラインツールである vca-cli を紹介したいと思います。



● vca-cli : インストール

vCloud Air のコマンドラインツールとしては、PowerCLI が有名です。6.0 Release1 より限定的に vCloud Air がサポートされ、直近の PowerCLI 6.0R3 では vCloud Air On Demand もサポートされております。

PowerShell は現在この世に存在する中で最高のシェルでありスクリプティング環境(個人の意見です)ですが、世の中には光が届かず PowerShell の恩恵にあずかることができない暗闇、というのもまだまだ沢山あります。Mac とか。

そうした環境でも利用できるのが vca-cli です。vca-cli は Python で記述されたコマンドで、Python が動作するところならどこでも、非Windows 環境でも動作致します。

インストールは github clone で GitHub からコピーして...、ではなく、Python 標準の pip コマンドからインストールできます。GitHub にソースが公開されているだけではなく、Python のパッケージとしてPyPI にもちゃんと登録している次第です。

https://pypi.python.org/pypi/vca-cli/14

具体的な手順も GitHub の該当ページに記載されおてります。今回はまず試しに Ubuntu Linux 14.10 を使用しましたが、この場合は以下になります。

$ sudo apt-get update 
$ sudo apt-get install -y build-essential libffi-dev libssl-dev libxml2-dev libxslt-dev python-dev
$ wget https://bootstrap.pypa.io/get-pip.py
$ sudo python ./get-pip.py

$ sudo pip install vca-cli

$ sudo pip install pyopenssl ndg-httpsclient pyasn1$ sudo pip install six --upgrade
$ sudo pip install cloud-dsl-parser --upgrade

1行目でまず既存パッケージを最新にアップデート、2行目で必要となる外部パッケージをインストールします。

3行目は、pip を使うため初期処理を行うスクリプトをサイトからダウンロードしております。
4行目でそのスクリプトを実行、pip コマンドが使えるようにしております。
5行目にて、pip コマンドで vca-cli をインストールしています。

Ubuntuでの vca-cli のインストール


インストールの過程で依存するパッケージのインストールもまた行われます。
しばらく待つと上図のように Successfully installed と表示され、インストールには成功するのですが、なにやらSSLの警告もまた出ております。どうも、SSLのライブラリが証明書の正当性の検証をしていないことから来る警告のようです。

これの解決が6行目で、pyopenssl ndg-httpsclient pyasn1 という三つのパッケージを追加しております。

最後に、six と cloud-dsl-parser というパッケージのアップグレードをかけてます。apt-get update で Ubuntu 的なパッケージは最新にしているはずなのですが、この二つのPythonのパッケージのバージョンが古いため vca-cliの実行に失敗していたためです。


Python パッケージが古いと、コマンドの実行時こういう形で警告が出る
警告に従いそれぞれをアップデートしました。


● vca-cli : 使ってみる

さて、では vca-cli を使ってみます。vca-cli のコマンド名は「vca」です。何も引数をつけず実行すると、(全てのパッケージが正常ならば) 以下のようなヘルプが表示されます。
vca コマンド
vca コマンドにはいくつものサブコマンドがあり、サブコマンドに -h オプションをつけて実行するとサブコマンドごとのヘルプも確認できます。ここら辺の使い勝手は ESXCLI とほぼ同じです。
(なぜコマンド名を vcacli なかったのか不思議ですが)
login サブコマンドのヘルプ

上記のヘルプから分かるように、vca コマンドは vCloud API の 5.1および5.5~5.7 までをサポートします。

vCloud API 5.6 では vCHS Platform API を使って DC, VDC の操作が可能です。
vCloud API 5.7 では vCA Platform API が使えますので OnDemand と VDC が操作できます。

面白いのは vca コマンドが vCloud API 5.1/5.5 をサポートする、と言うことです。これは vCloud Director としか通信できない、WebConsole (ポータル)へアクセスする拡張がないバージョンです。
DC, VDC の vCloud Director を直接指定して使うという使い方や、プライベートクラウドで動作している vCloud Director へもアクセスできる、と言うことです。

さて、ログインしてみます。vCloud Air にログインする場合はユーザ名だけを指定します。

$ vca login <username>

パスワードを聞かれますので、正しく入力するとログインできます。なお、このときプロファイルにパスワードが保管されます。好まれない場合は --do-no-save-password オプションをつけて vca login を実行します。

アクセスできるインスタンスの一覧は vca instance ないし vca instance list コマンドで取得できます。
$vca instance
結果は以下の通りです。

ログイン後、VDCの一覧を確認
vCA Platform API で動作しているため、VPC, OnDemand, ObjectStorage が表示されます。

また、vca instance info コマンドで各インスタンスの概要を確認できます。
$vca instance info -i <Instance ID>
結果は以下の通りです。

vca instance コマンド実行結果
URLが長いため少々表示が崩れてますが、大まかな状況は確認できると思います。

実際にアクセスするインスタンスは vca instance use コマンドで指定します。
$vca instance use -i <Instance ID> -v <VDC Name>
以下が実行結果です。今回はインスタンスが Virtual Private Cloud On Demand のため、VDCが一つしかなく、指定を省いてます。Dedicate Cloud のように複数VDCが存在しうる場合は、明示的に指定しておくべきでしょう。

Instanceを指定
上図では OnDemand を選択した後に、vca vm list で仮想マシンのリストを得ております。

なお、ca login 時に -i <Instance ID>, -v <VDC Name> を指定、最初っから use しておくこともできます。二度目のログインなどでもう InstanceID が分かってる場合はその方が手っ取り早いでしょう。

自身が何を use しているのか、などは vca status で確認できます。

状態を確認
仮想マシンの作成、起動は vca vm ではなく、vca vapp を使用します。vCloud Director がベースのため、1vApp 1VM で簡略化されても、あくまで vApp という枠を使用することになります。

vca vapp には create, deploy, customize, power-on, power-off, insert, eject 等々、多彩なサブコマンドが用意されております。実際、操作はこの vca vapp をひたすら使うことになります。
$ vca vapp power-on -a <vApp名>
ここでは単純に、既存の仮想マシンを起動してみました。

vApp を確認、起動
vca-cli の使い勝手はこのような感じです。

●プロファイル

接続先ホストやログオンの状態、use したインスタンスなど vca-cli での現在の状態(context)はプロファイルと呼ばれており、 ~/.vcarc に格納されます。既定では Default というプロファイルが指定された状態になっています。

プロファイルについては vca profile サブコマンドで確認ができます。

現時点では、vca profile にはさらなるサブコマンドがありません。新しいプロファイルを作ったり、プロファイルを切り替える機能は未実装であるといえます。

表示についてだけは複数プロファイルに対応しており、.vcarc ファイルを編集することで複数プロファイルの作成、vca-cli が使用するプロファイルの選択ができます。

プロファイル一覧、vcarc を編集して無理矢理増やしている
プロファイルは [] からなる項目名で分けられ、各項目は「設定名 = 値」の繰り返しになります。
ちょうど WIndows の INI ファイルににてますね。

vcarc []のセクションごと一つのプロファイルになる
ここにパスワードの難読化がかかったものが格納されます。初戦は難読化、デコードできないわけじゃないので、このファイルには気をつけた方がいいでしょう。

● Windows だって vca したい!(失敗編)

さて、vca は Python のスクリプトの集まりで、Python 2系統の処理系があれば動作するはずです。ということで、Windows でも試してみました。

Python の公式サイト( http://python.org )では、ソースコード等に加えて Windows 版のインストーラも提供されております。
Python for Windows
Python 2.7.11 の方をダウンロード、インストールします。C:\Python27 にインストールされますので、このフォルダと、C:\Python27\Scripts を環境変数PATHに追加詩と絵来ます。

あとは Ubuntu での手順と同じで、https://bootstrap.pypa.io/get-pip.py をダウンロードし、実行、pip install vca を実行してみました。

ところが、依存のあるコンポーネントの一つがどうも Cでのソースコードがありビルドする必要があるようで、Visual C++ 9.0 がない、という理由で Fail してしまいました。




lxml でビルドが走り, Fail
さすがに VisualStudio はいれていなかったのでここで失敗となりました。Azure の管理をおこなう端末に VC++ が入っているという前提は厳しいので、普通の端末では vca の使用は厳しい、という結論となりました。

次回は、Visual Studio をインストールして試してみたいかと思います。